金融・経営・現場に15年いる私が介護業界の問題点とその克服方法を語ります。(自分へ)細かくなりすぎないように注意すること!
介護を取り巻く三重苦
介護業界は財政の逼迫、介護職不足、制度の劣化という三重苦に苛まれています。
これらは全て進行性の成人病のようなもので、すぐに死に至る事はありませんが放置していると様々な合併症を発症しながら徐々に身体を蝕んでいきます。
1.社会保障費の圧迫
介護は年金、医療、福祉などとともに社会保障の一部であり、税金が投入されている以上、国の財政とは切っても切り離せないかんけいにあります。
上記のように社会保障費は年々伸びており、2022年には130兆円に達することが予想されています。社会保障費は個人の保険料:約32%、事業者の保険料:約28%、税金:約40%で賄われており、基本的に年々保険料は上がっていくことになります。
その中で介護事業費は10兆円程度で、毎年2,000億円程度増えています。ちなみに年金が60兆円程度、医療費が40兆円程度になっています。
財務省は介護費用に関して非常に厳しく締め付けに入っています。そのせいで、3年毎に改定される介護保険法の改正は改悪ばかりになっており、介護業界を疲弊させて行きます。
高齢者の数が増えているのだから費用が増えて当然でしょう。それを無理に抑制させようというから制度が疲弊せていくのです。介護現場の実情に合わせた予算設定をしてもらわねば、この業界は持ちません。
2.介護職は疲弊し、介護職不足は危機的!!
私は介護に携わって12年、デイサービスの経営者として10年、たくさんの介護職員たちとともに働き、たくさんの高齢者たちに幸せを提供してきました。(つもりです。)
しかし、幸せを提供し続けてきた、私達介護職員が今、疲弊しています。
命を預かる重労働を、月収25万円以下の安月給で、サービス残業や夜勤を強いられ、人間関係に悩みながら働いています。
介護が好きなのに結婚相手の親に反対され泣く泣く別の業界へと言ってしまった若者がいました。介護が好きなのに・・・こんなのおかしくないですか?
介護職員不足が叫ばれて久しいこの国では、わずか10年後には70万人の介護職員が不足するなどというデータも示されているのに国も自治体も何もやってくれません・・・
もう一度言います。介護職の平均月収は25万円程度です。こんな業界に若者が来てくれるでしょうか。いい加減、制度が間違っていることを認め、抜本的な改革を行わないと介護業界は潰れてしまいます。
介護職不足の現状についてはこちら
結婚できない介護職の話
デイサービスで私と一緒に働いてくれていた30代の同僚が、結婚を期に介護職を辞めたいと相談してきました。介護は好きだけど、相手の親にその収入では結婚を許せないと言われたそうです。介護が若者の結婚を許さないような仕事であってよいのであろうか。介護が好きな若者を見捨てるのか。この仕組を作りあげ改悪を続ける政治家に対する怒りで煮えたぎりました。この業界はこのままではそう遠くない時期に破滅する。それを止めなければと政治の世界に足を踏み入れる決意しました。
下記は私が介護業界、ひいてはこれから介護を受けるであろうすべての国民の未来を守るための成し遂げたい理念的な政策です。
3.規制の呪縛で失われる介護業界の競争力
介護事業は未だに自由な価格設定やサービス提供時間中の保険外ビジネス(混合介護)を認めていません。サービスの加算に付いても人員の配置と記録のみで算定されています。
そのせいで介護事業者は創意工夫を行わなくなり、最低限のサービスを行い紙の記録を残すことにエネルギーを消費しています。
また、規制に縛られることで、新規参入は制限されどんな事業者でもある程度の売上がたちます。このぬるま湯が競争力のない事象者を延命させ続け、業界の成長を阻んでいます。
本来、サービスの向上や新たな設備投資によって競争力をつけることで業界全体として切磋琢磨し合あうのが健全な業界です。このままではサービス業の一種として介護事業は立ち遅れた業界になってしまうでしょう。
いつの日か、高級ホテルなどの外国資本が介護業界に殴り込みをかけてきたときに、一気に日本の介護事業者が潰されてしまうかもしれません。
規制を緩和するところは緩和して、競争の中から介護事業所がしっかりとサービス業としての付加価値をつけるための環境を整備しなければなりません。
介護崩壊はもう始まっている!
介護崩壊が起こってしまえば必要な介護が受けらない介護難民が増え、その負担はご家族や地域にも及びます。介護崩壊はすぐそこに迫っているのに、政府の対応は後手後手と言わざるを得ません。
介護崩壊が起こったら
また、今現在の介護保険はなんとか回っているように見えますが、このまま10年もすれば下記のようなそれは恐ろしい介護崩壊が起こってしまいます。
世の中の介護は家族がやるか、超高額費用を払うかの2択になってしまいます。
このままだと10年で起こる介護崩壊
- 特養は人材不足でほぼ閉鎖、施設は超高級ホームのみ
- ロボットによる送迎や入浴介助、リハビリの開始(良い面もあり)
- 訪問介護の生活援助(軽度な作業支援)は廃止
- 認知症患者が街に溢れ、街の機能の低下や治安の悪化
- 長男長女は高齢者を看るのが当たり前に
上記のようことはこのままではほぼ間違いなく訪れるといわれている介護の未来です。
もうすでにその兆候は始まっています。例えば要介護3から入れるはずの特養は要介護5であっても簡単に入れる状況ではありません。それは人不足でベッドを開けることのできない施設が多数存在するからです。
介護サービスを利用することができなくなった高齢者の面倒を見るのは家族となり、老々介護による事故や介護離職がますます進みます。
認知症に対応する施設や支援ヘルパーが減ってしまい、見た目にはわからない認知症の高齢者が増えて街が混乱するかもしれません。
介護崩壊は突然に!
介護崩壊は訪問介護から始まっています。ダムは決壊したら一気に崩壊し全てを飲み込んで破壊し尽くします。訪問介護の崩壊は家族や他の施設への負担に繋がり、家族への負担は経済活動を停止させます。そうなれば国の根幹の破壊へと繋がります。
制度を変えるには時間がかかります。ましてや社会保障を含めた超巨大な仕組みの歯車に一つである介護に変革を起こすことは並大抵の労力や時間では不可能です。
みなさん、気づいてくださいこの危機的状況に。そして、少しでも声を上げてほしいのです。
ご家族の介護負担は社会問題へと
介護崩壊が起こると困るのは高齢者や障がい者だけではありません。そのご家族に大きな介護負担がのしかかっていきます。施設に入るには多額の費用がかかるため誰もが入所できわけではありません。
素人のご家族が介護を続けることで平穏な生活は脅かされ、大きな社会問題となっていきます。
ヤングケアラー
家族の介護を行うために学校に通うことができなかったり、友達と遊ぶ時間が削られるような子供のことをいいます。ヤングケアラーは家庭内に潜み見つかりにくいことが指摘されています。
また、本人が自身の問題点に気づきにくいことも問題化しにくい理由だと言われています。
ビジネスケアラー・介護離職
仕事をしながら家族の介護を続けている方も増えています。と言うより当たり前になりつつあります。
同居していればまだいいですが、別居家族の介護を仕事をしながら行うのは大変です。
手が足りずに会社を退職したり、パートに転職しなければならない方も増えており、介護離職として大きな問題となっています。
ダブルケア
近年では晩婚化の影響もあって子育てと親の介護を同時に行っている主婦が増えています。
子育てと高齢者介護は全く別物で、同時に行うことは大きな体力的、精神的負担になります。
認知症介護
認知症患者は700万人を超えたと言われれ、予防が必要な人を含めると裕に1,000万人を超えており家族の負担や地域の負担が大きくなっています。
認知症患者の症状は多岐にわたり一概に対処できるものではありません。負担のかかるケースではご家族の生活を一変させてしまうほどの影響があります。
認知症は早めの予防、早めの診断、早めの治療が重要です。
無策な政府
介護業界は危機的状態であるにも関わらず、行政は問題を先送りにして抜本的な改革を打ち出せていません。
正直やっているポーズだけの解決策には辟易とします。例えば技能実習生を代表とする外国人の在留資格による介護職への登用制度ですが16万人の外国人を介護業界に定着させることを目標にしていますが、現状1万人程度にとどまっており、介護職不足を解決できていません。
また、介護職の賃金をあげるための処遇改善加算に関しても全産業の平均と比べて200万円低いと言われているのに月9,000円の改善しか打ち出せない政府にはがっかりです。しかも、これに関しては、生活相談員やリハビリ職に関しては対象外とされており、実質の効果は遥かに低いと思われます。※処遇改善加算の問題点についてはこちら
このように、現在の行政から介護業界をどうにかしなくてはという意思は感じられません。無策を取り繕うための統計データづくりに精を出しているように思ってしまいます。
※統計データの疑問については別の記事で
坂元ゆうきの描く解決策
1.介護業界の構造改革で利益体質に!
介護はこの先40年にわたって市場が伸び続ける稀有な存在です。なのに全然儲からない!
介護保険事業は公定価格によってサービスの内容と単価を決められています。その単価は低く、3年に1度しか改定が行われないので継続的な物価高に対応できません。介護業界を利益の出せる業界に!
介護給付費の失敗①
介護事業者が利益を出せなければ職員の給料を上げることなんてできないのは当然です。
介護事業は介護給付費という公定価格によって売上単価が決められており、定員数によって顧客数に上限が設定されています。これはどんなに頑張っても超えられない壁が設定されているようなものです。
つまり、ある程度出来上がってしまった事業所では昇給の原資が見込まれないということになります。
そこで、介護給付費逓増が必要とされるのです。給料を上げる企業に減税を行う前に最も給料が低いとされる介護職員のために昇給の原資を与えなければなりません。公定価格なのですから国の責任です。国が4%の昇給を要求するなら毎年2%の介護給付費の上澄みが必要になります。
しかし、現実には公定価格はこの20年基本的に下る一方で、上がっていく気配がありません。厚生労働省はプラス改定と言うかもしれませんが、都合のいい計算に過ぎません。実質介護職員の給料が上がってきたのを見れば一目瞭然です。
処遇改善加算の功罪
2000年代の後半にはすでに介護職員の不足が叫ばれており、それに対して政府は2009年に「介護職員処遇改善交付金」を制度化しました。
2012年にこれを介護報酬の加算として組み込んだものが処遇改善加算です。
売上に対して一定割合をプラスするという支給のされ方で、業種ごとに加算率が設定されていました。
ちなみに2012年のデイサービスの処遇改善加算率は1.9%でした。
これは売上に対して1.9%分上乗せされるということです。
しかし、少なくてもデイサービスを含む小規模の事業者は処遇改善加算が生まれた2009年から2012年の間に介護報酬は大きく引き下げられました。
それは処遇改善加算の増加分を上回るほどの削減となった事業所も多数存在しました。
つまり、介護給付費を下げたお金で処遇改善加算を配ったというからくりがあったのです。
これは当時の介護事業者に対して、国は本気で介護職員の給料を上げるつもりがないんだとという強烈なメッセージとなってしまったのです。
国は経営者が介護職員の給料を上げやすいように、処遇改善加算を上げるとともに介護給付費も真の意味でプラス改定を行うべきです。
介護給付費の失敗②
必要なサービスを提供したらその分の対価をいただく。
その対価は需要と供給によって決まり、よいサービスを提供したらその分多くの対価を。サービスの質が低下したら少ない対価になるか、全てを逃してしまう。これが通常の商行為における基本なのですが、これが介護事業には通用しません。
正しい対価が設定されていない
例えば、訪問介護や訪問看護などのご自宅に訪問して行うサービスの移動に対する対価が設定されていません。
次の訪問先までの移動距離はときによっては30分以上かかることもあるのですが、それに対する対価(介護給付費)が設定されていないのです。
ですから、事業所よりよほど離れたお宅であると訪問を断られてしまう事例がかなりあるのです。
都心部であれば他の訪問事業所を見つけることができるでしょうが、僻地にお住まいの方では訪問サービス自体を諦めざるを得ません。
また、デイサービスにおいても入浴介助に対する対価が40単位と400円ほどに設定されています。ご利用者様の介護度によりますが大変な方だと一人に対して介護職員2人で1時間がかりで入浴介助を行った場合でも、400円しか支払われません。
これでは入浴サービス提供するほど赤字になってしまうと入浴サービスを中止する事業所が出たくらいです。
このように介護サービスに対する対価設定がおかしいことで事業所の売上が不当に圧縮されており、ひいては要介護者に対して必要なサービスが提供されないという自体にまで発展してしまっているのです。
サービスの質を上げても意味がない制度
介護サービスはすべてのサービスに対して細かく対価が設定されています。これは事業者側で勝手に値上げや値下げすることはできません。
つまりサービスの質が上がっても下がっても、価格が変わることがありません。例えば、厳しい麻痺を持った利用者に対して百万円以上もする最新式のリハビリ設備を導入しても、国内でも有数の知識と経験を持った理学療法士が一対一でリハビリを行っても同様の値段しかつけられないのです。
そうなれば、事業所にはサービスの質を上げるインセンティブは存在しないことになります。
お金や時間などのリソースをかけた分だけ損になってしまうのに、質の高いサービスを提供する経営者は経営者として失格ですから。
物価連動型報酬制度
物価の上がらない30年間を過ごしたことで政府は対応策を忘れてしまいました。高度成長時代の1950年後半から70年代前半は毎年5~15%成長を続け、それに伴って物価も上がり続けました。
物価が上がるのが当たり前の世の中、政府や自治体の支出も伸ばすべきものをしっかりと把握していました。
社会保障給付の多くは最終的に70%ほどが人件費や人に支払われるものですので、物価に連動していなけない費用です。ですから、高度成長期に診療報酬は大きく伸びていました。
しかし、30年デフレを経験した後の2020年代、物価上昇局面になっても政府は支出を上げるべき分野に速やかな対応ができていません。
介護報酬は3年に一度、診療報酬は2年に一度しか報酬改定が行われません。その間に物価が5%ずつ上がってしまうと事業者の実質的な売上は10%以上減少することとなり、給料はそれ以上減少させなければやっていけないことになります。
社会保障関連給付において、診療報酬や介護報酬、年金など定率的な給付ではなく、定量的に給付が決められているものに関しては毎年物価に連動させる仕組みが必要だと思います。
介護報酬に関しては地域加算という最終的な点数に乗じる加算がありますので、この数値を物価に連動させれば基本報酬を変える必要もないのでシステム改修も最低限に済ませることが可能になるのではないでしょうか。
軽度者の地域支援事業移行について
財政審が毎回出してくる訪問介護や通所介護(デイサービス)を利用する要介護1・要介護2は地域支援事業(総合事業)に編入させるという案ですが、その影響を見るうえで参考になるのが、すでに行われえている要支援1・2の例です。
保険から地域支援事業への移行を簡単に説明します。通常保険サービスは国が決めたサービスと料金しか採用できません。それを自治体ごとにサービス内容や料金を決める権限を与えるというものです。ただ、たちが悪いのが今までの料金以上にしてはいけないという蓋が被されていることです。
つまり、自治体次第で保険同様のサービスを続けることが出来ますし、自治体次第ではまるで利用ができなくなるというものです。
サービス中の保険外サービスを認めろ!
現在保険サービス中に保険外サービスを行うことは禁止されています。当然保険サービスでやるべきことをやらずに保険外サービスを行うことは避難されるべきですが、例外の規定を作り認めるべきです。
例えば訪問介護であれば、実際家に行き保険内のサービスを行った後の時間に保険外サービスを頼んでも、ヘルパーは一度事業所に帰らないと保険外サービスを提供できません。
これを保険サービスの直後であれば保険外サービス可能とすれば事業所にとってもビジネスチャンスとなるわけです。
デイサービスでも高齢者はいらっしゃる時間の大半を休憩時間として過ごしています。その間に散髪を2,000円で提供したら喜ぶ方も多いでしょう。現在のルールではこれができないのです。
介護度1・2を総合事業に組み込んでもいいですが、ただ単に報酬削減となってしまったら介護業界は終わります。せめて現状維持の報酬を保ったうえで保険外サービスの解禁が必要です。
2.介護職の処遇を上げて高齢者も幸せに!
介護職員の処遇をあげ、質の高い人材を集めることで高齢者が幸せになることが理想の循環です。
同一労働同一賃金の実現
同一労働同一賃金とは
同一労働同一賃金という言葉が独り歩きしている感がありますが、わかりやすく言うと短時間労働者(パート)と正社員の給料格差をなくそうということです。
しかし、パートは毎日出勤しているわけじゃないし月給と時給では比べられないと言われる方には簡単な比較方法があります。
あなたが短時間労働者の場合、平均的な正社員の月間就業時間(190時間)をかけてみてください。
時給1,200円の場合、190時間を掛けて月給にすると22.8万円になり、あなたと同じ仕事をしている正社員と比較してあまりに低い場合は是正する必要があるということになります。
正社員の数値は残業代は省きますが、ボーナスなども按分して入れる必要があります。
また、福利厚生や研修の機会などの待遇面についても同等でなければなりません。
非正規職員を活かしてこそ
さて、介護職員は正社員であっても給与が低いことはお話しましたが、非正規の職員は更にひどい状況です。
介護業界は非正規職員の割合が極端に高いことで知られていて、全労働者に対する非正規の割合はほぼ50%となっています。
特に女性のパートの割合が多く、最低時給水準の時給で働いている方がとても多いです。
実際にパートさんがいるから日々の業務が回っている事業所ばかりなのではないでしょうか。
同一労働同一賃金の真の目的は不当に安い給料で働かされているパート職員に対して、正社員並みの給料を支払おうというものです。
給料の計算方法は先程の逆で同一労働の正社員の月給を190で割ったものが適正時給となるわけです。
そうすることでパート職員は同じ施設で安心して長く働くことができるのでサービスの質が向上します。
正社員の時給制の推奨
同一労働同一賃金は正社員の時給制とも相性の良い考え方です。正社員は月給でなければならないなどというルールはないのです。
正社員も時給制を採用することで社員にとっても働きたい時間内での勤務が可能になったり、会社側も必要な時間だけ働いてもらうことも可能になります。
また、時給制にすることで残業に対する意識も強くなり無駄な残業やサービス残業が減るという双方にとって良い結果が期待できます。
当然雇用契約での合意が必要になりますが、新しい働き方の一つして選択肢に入れてみてはいかがでしょうか。
介護職員時給限界説
介護事業の売上は公定価格
介護保険事業の売上に当たる介護給付費が国の基準によって決められている話はなんどもしました。
訪問系サービスには時間あたりの金額、通所系サービスには定員数が決められているため介護事業所の売上の限度というものが決まっていることになります。
そうなると、当然介護職員一人ひとりの売上も大体見えてきてしまうのです。
そうです、つまり、介護職員の給料も公定価格によって決められてしまっているのです。
介護職員の1時間の売上は3,000円
それでは具体的な介護サービスに対する対価を見ていきましょう。
訪問介護は身体介護と生活援助に別れていて給付費も別々に設定されています。身体介護は主にお風呂や排泄など要介護者の移動が必要となり重労働になります。生活援助は身の回りの炊事洗濯を手伝う感じです。
たとえば訪問介護の60分未満の身体介護サービスは約4,000円になります。
一方生活援助サービスの場合45分未満で1,800円程度です。これを60分辺りに直すと2,400円程度になります。
つまり、介護職員が1時間働くと重労働なら4,000円、軽労働なら2,400円の売上があげられるのです。平均すると時給は3,200円程度となります。
デイサービスの場合もそれほど開きはありません。デイサービスの介護給付費はご利用者の介護度やご利用時間によって細かく別れていますが、介護度2で入浴やリハビリを行った場合を想定します。
デイサービスは1日利用すると9,000円程度の収入があります。
デイサービスの場合は介護職員が1対1で介護を行っているわけではありません。介助内容や施設の規模にもよりますが一人の職員で3名程度を見ることができるでしょうか。
そうすると、一人の職員で1日27,000円の売上を上げることができます。職員が1日8時間働くとすると1時間あたり3,400円程の売上をあげられます。
これも、先程の訪問介護と大体同じくらいになります。
介護職への寄付制度、ガイドライン化
介護職をやっていて何度か高齢者から寄付の打診を受けたことがあります。そこで、自治体に確認を取ったところ、「トラブルの原因となりかねないので寄付などは受け取らないでほしい」と暗に止められてしまいました。 確かに高額な寄付を受け取った場合、ご家族とトラブルになる可能性があるでしょう。しかし、その時はそれほど大きな額ではなかったし、その高齢者にはご家族がいませんでした。
介護職の給料が低く問題になっているのになんの手当もできない行政がせっかくの申し出を台無しにしてしまいました。高齢者も少しでも介護職の生活の足しになればとの気持ちだったでしょうが、逆になにか嫌な気持ちにさせてしまう結果となってしまいました。我々介護事業者は行政に指導監査を受ける立場ですので、無視して受け取るわけにも行かないのです。
私は国なり自治体が寄付に対するガイドラインや契約書を作り高齢者やご家族が気持ちよく寄付を行え、寄付を受ける側も笑顔で受け取れるようにするべきだと考えています。
ガイドラインの一例
法人や事業所が寄付を受ける場合、受け取り分は10%以下で残りを介護職に平等に配ること
寄付の上限は100万円までとし、それ以上になる時は弁護士を挟むこと
寄付を受けるのは自治体、法人、事業所とし個人は対象としない
3.介護の未来
高齢者、そのご家族、介護職員、介護事業所、地域の人々、行政、介護に関係するすべての人が充実した幸せになるような仕組みは作れないか。理想を語るなと怒られるかもしれませんが、ここでは語らせてください。
介護業界は氷河期世代を待ってます!
就職氷河期世代とは1995年あたりから2005年に就職活動を行った世代のことを言い、正社員として働くことができずに、非正規で働いている人がとても多いことが問題視されています。
私はいわゆる就職氷河期世代に当たる昭和55年生まれです。学生時代の仲間たちの多くが非正規で未だに苦しんでいます。
2022年現在で40代から50代前半くらいのまだまだ働き盛りの世代であり、これを放置して置くと後の社会保障に大きな悪影響が予想されるため早めの対策が急務です。
介護業界は氷河期世代を待っています!
一方、ケア業界は40代以降の職員が少ない傾向があり、特に40代から50代の男性職員がぽっかり空いてしまっているのです。
この世代の働き手はリーダー職や管理職として手腕を発揮する世代で、業務を円滑に回すだめのスキルと経験を有した上でマネジメントも行えるという重要な世代です。
また、職員と経営の間に立ちお互いの考えなどを伝えるためのパイプとしての役割を担うこともあるはずです。そんな世代が足りていないのです。
私も介護業界を長年見てきましたが、若い管理職が年上の介護職員をまとめきれずに崩壊していく事業所を多数見てきました。
まさにケア業界は、就職氷河期世代が活躍するのにうってつけの業界なのです。
氷河期世代をケア業界に呼び込むために資格取得の制度や補助金制度、マッチングを行政が主体になって行わなければなりません。当然ある程度まで待遇をあげる必要もあります。
介護職員の待遇を上げた上で、就職氷河期世代の流入を行うことができれば経済政策としても、社会保障対策としても一石二鳥の政策となることでしょう。
介護職の経済効果
介護福祉保育職員の収入を上げることが通常のバラマキによる経済政策以上に消費に回ることでより大きな経済効果が見込まれます。
ケア職員が低所得にあえいでいることは先に申し上げましたが、年収が低いほど限界消費性向(年収が上がったときに消費に回る率)が高いことがわかっています。
ケア職員の収入を上げる政策は特に経済効果が高いのです。
なぜ介護職の収入を上げるべきなのか
特に介護職員は消費に飢えている傾向にあります。
その理由は低所得だけではなく、日々高齢者と携わる中で若いうちに楽しんでおかないといけないと思ったり、手に入れたいものを想像しているからです。
こう言ってしまうと語弊があるかもしれませんが、いくらお金を持っていても使いみちがなく寂しい思いをしている高齢者は多いのです。
全国のケア職員を500万人とすると、その年収を200万円上げることだけで10兆円の所得増加があり、そこから波及的に経済効果が生まれていきます。
また、目黒区内に限っても介護福祉保育職は1万人程度、300億円の所得増加となり大きな経済効果が見込まれます。
地元に対する経済効果
そして、ケア職員は地元地域で働いている割合も多いので、その増加した収入の多くを地域で消費するでしょう。
また、ケア職員の年収が地方公務員並みに上がれば、婚姻数や出生数も確実に上がります。公務員同士の結婚がとても多いのに介護職員同士の結婚がそれほど多くないように感じるのも収入が大きく関係しています。
このようにケア職の所得を上げることは、彼らのみの為ならず、地域(経済)のためでもあるのです。
要介護者の消費欲に火をつけろ!
私が介護に携わるようになって12年、様々な高齢者と出会い交流を持ってきました。延べ3,000名くらいでしょうか、そのほとんどの方にしている質問があります。
「それは、これから1週間以内に使わないといけない100万円をもらったらどうしますか?」
というものです。
その答えの50%くらいは使い道がない、誰かにあげるというものです。
残りの50%も
・子供や孫(介護職員など)にあげる
・旅行に行く
・あんたにあげるよ
などといいうものです。
つまり、高齢者は日頃からなにかにお金を使ってやりたいことがない、もしくはお金を使うことを意識していないのです。
高齢者はお金を持っている
一方高齢者がお金を持っていないかというとそうではありません。
65歳以上の高齢者の総保有資産は2020年で1,500兆円を超えており、国内の個人資産は3,000兆円と言われていますからその半分を65歳以上の高齢者が保有していることになります。
そしてそのうちの1,000兆円が現金や株などの金融資産と言われています。
つまり、いつでも使えるお金というわけです。
国内の個人消費が毎年300兆円程度と考えると、この1,000兆円を少しずつでも使ってもらえれば大きな経済効果があるのは間違いありません。
当然それは政府も考えることで、歴代の政府がずっと叶えることができなかったことになります。
要介護者のお金の使い道
なかなかお金を使わせることのできないお金を持っている高齢者。そして高齢者の中でもお金の使い道がない要介護者。
私は、我々介護事業者こそ要介護者のお金の使い道を作っていくべきだと思っています。要介護者が何を望んでいるのか、どんな障害があってそれが叶えられないのか、我々は要介護者と普段から時間をともにしているからこそわかることがあるのです。
以下に私が考える要介護者のお金の使い道を何個かあげてみます。他にもお金の使い道は必ずあるはずです。なにか思いついた方はコメントでもメールでもぜひ提案してください!
見て触って、買うもの
多くの要介護者は買い物に行きたいと考えています。ヘルパーに行ってもらえばいいと思われるかもしれませんが、やはり店舗に行って見て触ってみると購買意欲もまるで違ってきます。
購買意欲をあげるためにも店舗に行くことが大事になります。自分の足でスーパーへ日用品を買いに行くためのヘルパーサービスはどんどん活用していくべきです。
要介護者であっても職位対する意欲が高い方は多く、いいものを見て買いたいという希望も多いです。
日用品以外であっても買い物への同行は介護保険制度で付き添いを行えるようにする必要があるかもしれません。介護保険制度を使えなくても介護事業者は買い物同行への自費サービスを強化してもらいたいです。
私の経験上、要介護者であってもテレビやラジオにはこだわりがあるように思います。家電量販店で最新のテレビや冷蔵庫などを見れば購買意欲が湧くかもしれません。
旅行や観光への弊害
旅行や観光に行きたいと思っている要介護者は非常に多いです。昔行った温泉地にまた行ってみたい。旦那と思い出の地にもう一度行きたい。などという希望です。
旅行の希望を阻んでいるのは、ホテルや旅館の体制と移動の問題です。
体制の問題とは、車いすの方の対応ができるバリアフリーの設備や要介護者の世話ができる人材がいるのか、要介護者特有の入浴や食事の問題を解決できるのかなどです。
移動の問題は車いすの送迎が可能な車があるのか。や、電車やバスに乗れる方であってもトイレの問題もあります。
要介護者は周りに迷惑をかけることを申し訳なく思っています。そんな思いをしてまで旅行に行きたくはないと考えてしまうのです。
しかし、逆に考えればこれらの問題を解決すれば要介護者にも旅行や観光を楽しんでもらえるはずです。
ネット環境の先に
高齢者こそネット環境を整えるべきだと思っています。見守りやバイタルチェックのデバイスなどはこの先どんどん進化するものだと思います。しかし、ご自宅にネット環境が揃っていなければ便利な機器を利用することができません。
ネット環境が揃えば通販やサブスクサービスなども利用出来るようになります。
介護職員へのチップ?制度は可能なのか
ここで私が考えている、高齢者のお金の使い先を一つ紹介したいと思います。
それが、介護職員へのチップ制度です。
お世話になった介護職員に対して多少のお小遣いを寄付できる制度を実現させたいのです。
現在の介護保険制度ではグレーになっており、自治体によっては規制しているところまであります。
介護業界全体的に「それはやっちゃいけないよな」的な雰囲気が漂っています。
お金を持っており、使えない高齢者がいる一方、低賃金で結婚すら諦めていしまう介護職がいるのに、わざわざ規制する必要があるでしょうか。
私はチップ程度の金額にするなど、ガイドライン的なものを作ってこの介護職へのチップ制度を実現させたいと思っています。詳しくは別の記事で。
介護職よ政治家を目指せ!!
介護業界は医師会、看護師会、薬剤師会のように強固な団体を持っていません。介護保険スタート時にまとまりきらなかったことで、全国老人福祉施設協議会(特養の団体)、全国老人保健施設協会など施設種別毎の団体や介護福祉士会のような職種別の団体など数多くの団体が設立されました。それぞれが政治について問題意識を持っていてもそれを議論しているのですが、中々まとまり切れていないのが現状です。
介護職は皆賢い者たちが多く高齢者の生活や介護業界の問題について本当によく考えています。しかし、政治的な背景や法律について知らないため議論がまとまりきらなかったり、声を上げる方法を知らなかったりと政治を変えるまでの動きに繋がらないのです。
私は彼らに法律的な面や行政の仕組みについて知ってもらい、介護を俯瞰して見れるようになってもらいたいのです。まずは施設の中でこの書類はなんのために作っているのだろう、とかなんで介護度が低くなると単価が下がってしまうのだろう、と言った疑問を話し合うところから始めてもらいたいです。
介護に携わる人達が政治の話をすることによって、団結していく必要性を感じ介護業界が纏まっていければ良いと考えています。
介護職は政治家に向いている!
私は介護職員は政治家に向いていると考えています。かく言う私も介護職から政治の世界に飛び込みましたが、介護をやっていて良かったと思うことがたくさんありました。
介護職が政治家に向いている理由
- 介護の現場を知っている
- 高齢者と喋ることが得意
- 我慢強い性格
この超高齢社会の日本では介護問題は今後40年は政治課題の中心に位置されることでしょう。有権者の数で考えても高齢化率は伸び続け、国民の関心事で有り続けるでしょう。
業界を中から知っていることでしか考えられない政策を打ち出すこともできることも強みになります。いくら制度や法律を知っていても現場を知らなければ思いもよらないことがたくさんあります。
政治家をやっていて高齢者のファンが
介護職が政治を学べる場を作りたい
特にこれからの若者には自分たちの力で介護をより良いものに変えていけるという希望を持ってもらえると嬉しいです。ですから、私は介護業界から政治を志す若者の後押しをするために政治の勉強会を開くなど援助を行っていきたいと考えています。介護職で政治家を志している方はぜひご連絡を!