外国人の労働に関しては、まず2つの重要な視点を指摘しておきたいと思います。1つ目は、まずは日本人がより働きやすい環境を整えること。2つ目は、外国人を単なる安価な労働力と見るのではなく、専門性のある優秀な外国人が「日本で働きたい」と心から思えるような制度と環境を整備することです。
現在、日本は深刻な労働力不足に直面しています。特に介護・農業・建設・外食といった分野では、人手が足りず、すでに多くの外国人労働者が現場で支えとなっています。誠実に働く彼らの貢献には、まず感謝と敬意を払わなければなりません。しかし、だからといって外国人労働に過度に依存し、「安上がりな人手」として扱う姿勢を続けることは、国家としての矜持を損なう結果につながります。
まずは日本人が働きやすい環境を
まず第一に考えるべきは、日本人がもっと働きやすく、安心して働ける社会をどう作っていくかという点です。特に出産・育児・介護などで一時的に離職した女性や、定年後のシニア層、障がいを持つ方々など、国内にはまだ活用されていない潜在的な労働力が数多く存在します。これらの人々が自分の能力を発揮できる場を社会全体で整備することこそ、真の意味で「国を強くする」道ではないでしょうか。
例えば、所得税の壁があることによって働き控えが起こっていたり、出産後の女性の所得が男性の70%に届かないなどいう問題を解決しなければなりません。
当然高齢者の労働力も重要です。働きたい思いと能力がある方はできる限り働いてもらえる環境を提供するべきです。
そのうえで、それでもなお不足する分野に限って、外国人の力を借りるというのが健全な国家の姿です。外国人労働者の受け入れは、本来“補完的”な措置であるべきであり、“代替的”手段になってはなりません。
日本の魅力を高め優秀な外国人の獲得を
第二に、外国人受け入れのあり方についてです。日本で働きたいと思ってもらえる国であるためには、制度の中身が重要です。これまでの技能実習制度では、長時間労働や低賃金、不十分な生活環境などが問題視されてきました。今後導入される育成就労制度では、「労働者としての人権」「働きがい」「職業的成長の機会」がしっかりと担保される制度設計が必要です。
さらに、治安・秩序の維持という観点からも、受け入れには明確な基準と厳格な審査が必要です。不法滞在や偽装難民、制度の悪用に対しては、毅然とした対応が欠かせません。日本の文化や価値観を尊重し、地域に溶け込み、真面目に働こうとする外国人が安心して暮らせる一方で、ルールを乱す者に対しては厳正に対処する。そうした「寛容とけじめ」のバランスが、主権国家としての最低条件であると私は考えます。
外国人労働者との共生は、単なる人手不足対策ではありません。それは「どんな国でありたいのか」「どんな価値を守るのか」という、日本の国家としての理念と深く関わる問題です。日本人が自信と誇りを持って働き、同時に、世界中の優秀な人材が「日本で働きたい」と願う──そんな社会の実現を目指して、私は責任ある労働政策と入国管理政策の構築を政治の場から強く訴えていきます。