若者の集まる街、目黒の再生へ
目黒区には、都内でも極めて珍しい特徴があります。それは、大学名を冠した駅が3つも存在しているという点です。都立大学駅・学芸大学駅・駒場東大前駅——これらは、かつて実際に大学のキャンパスが隣接していたことに由来しています。このように大学名が複数の駅名として残っている自治体は、全国的に見てもほとんど存在しません。
一時期、目黒区は「学生の街」「若者文化の発信地」として、確かな存在感を放っていました。サークル活動やゼミの帰り道、仲間たちと立ち寄った商店街、並んででも入りたかった話題のカフェやラーメン店、居心地の良い古着屋や書店——それらすべてが目黒区の「青春の風景」の一部でした。中でも都立大学や学芸大学周辺のエリアは、学生の活気と地域の温かさが自然に融合する、理想的な都市空間だったのです。
しかし、時代の流れとともに、都立大学や学芸大学のキャンパスは他地域へと移転し、駅名にその記憶をとどめるのみとなってしまいました。それに伴って、学生を中心とした日常的な賑わいも徐々に薄れ、かつてのような若者文化の息吹は次第に静まっていったのです。
また、かつては「住みたい街ランキング」で常に上位を争っていた中目黒や自由が丘も、今ではトップ10入りすら難しい年が続いています。おしゃれで感度の高い街という印象は今も根強くありますが、新たな若者の流入が鈍化し、ライフスタイルの中心地としての勢いが少しずつ他のエリアに取って代わられているのが実情です。
それでも、私は信じています。目黒区には、まだまだ秘めたポテンシャルがあると。むしろ、これまでの魅力と新しい挑戦を掛け合わせることで、もう一度「若者が集うまち」として再興できるのではないかと。
例えば、次世代型の起業支援や、スタートアップとの連携によるオフィス・住宅一体型施設の整備。地域の空き家を活用したシェアハウスやコワーキングスペースの整備。学生や子育て世代が暮らしやすい賃貸住宅政策、プレイパークの拡充や文化イベントの誘致。こうした施策を組み合わせることで、目黒区は再び、夢と熱量が集まる「挑戦する若者の街」になれるはずです。
私は今、そんな未来を見据えて、具体的な政策ビジョンを描き、ひとつひとつ実行に移す準備を進めています。目黒区に、もう一度あの若さとエネルギーを取り戻すために。
教育の多様化と深化で“学府の街”の復権を
子どもの数が減少する一方で、不登校や発達障害、家庭の事情などにより、学びのニーズはより複雑で多様化しています。こうした状況に対応するためには、一人ひとりの個性と状況に応じた柔軟な教育制度が必要です。
子ども時代に一度つまずいても、再チャレンジできる道筋を用意します。たとえ不登校や学習の遅れがあっても、一流高校・大学への進学が目指せるよう、区として支援の枠組みを整備します。
世界を目指すスペシャリスト教育の推進
従来の日本の教育は、「誰一人取り残さない」ことを重視した均質な学力の底上げを目的としてきました。その成果として大学進学率は向上しましたが、同時に突出した才能が埋もれてしまう側面も否めません。
これからは、個々の才能を見出し、伸ばす教育への転換が必要です。特に、目黒区には高い知的水準をもった子どもたちが多く、世界を舞台に活躍できるポテンシャルがあります。公立校に通っていても、本人の能力次第で国内外のトップ大学への道が開けるよう、制度的な後押しを行います。
たとえば、以下のような取り組みを推進します:
- 小中高と大学・研究機関との交流機会の創出
- スーパーコンピュータや3Dプリンタ、映像・ゲーム制作機器等の先端機材を導入
- 探究型学習やプロジェクトベース学習への予算支援
一人ひとりに寄り添う「教育ケアプラン」の導入
不登校やいじめ、発達障害などに悩む子どもたちに必要なのは、時間をかけて丁寧に向き合う支援です。私は、介護業界で用いられている「ケアプラン」制度を参考に、教育版の「寄り添い教育プラン(仮称)」を導入したいと考えています。
具体的には、
- 担任やスクールソーシャルワーカーなどが担当者となり、状態把握と分析を実施
- 学校や家庭と連携して個別の教育プランを作成・共有
- 定期的な面談とモニタリングにより、必要に応じてプランを更新
という流れで、子ども一人ひとりに合った道筋を支援します。
都市型公園の魅力を引き出す
目黒区は、都内23区の中でも1人あたりの公園面積が特に少ない地域です。都立公園や国立公園が存在しない目黒にとって、「公園の質をどう高めるか」は、街の魅力や暮らしやすさそのものに直結します。とくに子育て世代や若い世代にとって、安心して子どもを遊ばせたり、気軽にくつろげる空間が身近にあることは、住み続ける理由になります。
そうした中で、今注目されているのが碑文谷公園の再整備計画です。今後、民間のアイデアと資本を活かした**PFI(プライベート・ファイナンス・イニシアティブ)**が導入される予定で、公園に新たな風が吹こうとしています。
PFIとは、カフェやレンタルスペース、アクティビティ施設などを民間が整備・運営し、その収益を活かして公園全体の維持・改善を図る仕組みです。行政の予算に頼りすぎず、魅力的な空間づくりができるとして、全国的にも広がっています。
たとえば、「テニスコートのそばにおしゃれなカフェがあったら」「散歩中にふらっと立ち寄れる場所があれば」――そんな声を形にするのが、これからの公園の在り方です。日常の中に“ちょっとした楽しさ”や“余白”を感じられる場所。目黒のような都市部こそ、そうした空間が求められているのではないでしょうか。
一方で、子育て世代にとって見逃せないのが、「プレイパーク」の常設化の動きです。プレイパークとは、子どもたちが自然素材や手づくりの道具を使って、自由に遊び・試し・失敗し・学べる「冒険遊び場」。禁止事項を極力なくし、火や泥、木材など“本物の素材”と出会える場所は、今や都市ではとても貴重です。
現在、目黒区内でも市民団体による不定期のプレイパーク活動が行われていますが、常設型として設置する動きが、碑文谷公園のPFIと連携する形で進められています。地域アンケートでも高い支持を集めており、若いファミリー層からは「常設してほしい」との声が多く寄せられました。
このように、PFIによる空間の質的向上と、プレイパークによる“子ども主体の遊び”の両立は、まさにこれからの目黒区が目指すべき未来像です。遊びと癒し、にぎわいと安心――そうした要素を持つ公園こそ、若者や子育て世代が「目黒に住みたい」「ここで子どもを育てたい」と思える決定打になります。
これからの公園は、単なる“空き地”ではありません。地域の中心であり、世代を越えて人が集う場所であり、暮らしを豊かにするインフラです。
私たちは、こうした公園の未来像を区民のみなさんと一緒に描き、実現していきます。若い世代にこそ届く、公園から始まるまちづくりを――。それが、今の目黒区に必要な次の一歩です。
GSCとの連携でスタートアップの中心地に
目黒区・中目黒では現在、「グローバルスタートアップキャンパス(GSC)」構想が進行中です。これは東京の中心にスタートアップの拠点を創設し、研究開発から起業支援までを一気通貫で支える大型プロジェクトです。
この機会を最大限活かすために、目黒区として以下の取り組みを検討します:
- 起業家・投資家向けの英語対応窓口の設置
- **「目黒スタートアップ・ハブ」**の創設(交流・支援スペース)
- 多様なタイプの不動産の確保と初期費用補助(敷金・礼金免除等)
- 教育機関と連携した高度人材育成プログラムの支援
世界から集まる若者や企業が、目黒で起業し、育ち、羽ばたいて
空き家活用などで若者の家賃補助を
東京都内では、タワーマンションが建つと上層階から先に売れていくといわれ、外国人投資家による資産保有目的の購入が増加するなど、不動産価格の高騰が続いています。これに伴い、目黒区内の家賃も急激に上昇しており、若者を中心に「このままでは目黒区に住み続けられない」との切実な声が多く寄せられています。
実際、家族3人が暮らすために必要とされる70㎡程度のマンションでは、家賃が月20万円を超えることも珍しくありません。平均的な収入では、目黒区で暮らし続けることは非常に厳しい状況です。
私のもとにも、介護職に従事するご夫婦から「賃貸オーナーから突然、家賃値上げの通告を受けた。目黒区を離れざるを得ない」とのご相談がありました。共働きであっても、子育てをしながらこの街に住むことが難しい現実に、強い危機感を覚えます。
空き家の活用で、住宅供給を増やす
目黒区内には、1万戸を超える空き家が存在すると言われています。これらを有効活用することで、住宅供給量を増やし、家賃相場の抑制につなげることが可能です。
たとえば、築年数が古く、防災上の課題を抱える住宅や、市場価値が低下した物件に対して、リフォーム費用を補助したり、区が一括して借り上げるなどの仕組みを構築することで、相場より安価に賃貸へ回すことができます。
さらに、行政が仲介役を果たすことで、入居対象を子育て世帯や若年層に限定するなど、オーナーにとってもリスクが低く、安定した賃貸運営が可能になります。このような「公共と民間の協働による住宅政策」が求められています。
地域を支える職業に対する家賃補助
今、東京では学童保育の職員、介護職、バス運転手など、地域社会を支える職業で深刻な人手不足が起きています。とくに介護職は、国の介護報酬が低いため、事業者側にも賃金を上げる余力がなく、慢性的な人材不足が続いています。
こうした現状を踏まえ、自治体が地域に必要とされる職種の方々に対して、目黒区内での就労を条件に家賃補助を行う仕組みを整えるべきです。働く人の生活を支えることは、サービスの安定供給にも直結します。
若手起業家への支援で、新たな活力を
さらに、若手起業家に限定した家賃補助制度を導入することで、区内に新たなビジネスを呼び込み、地域経済の活性化にもつながります。起業を志す若者にとって、初期コストである家賃の負担は大きな障壁です。住宅支援を通じて「住み、働き、育てる街・目黒区」を実現していきましょう。
・スイーツ・ファッション・家具おしゃれな若者を呼び込め