必要なサービスを提供したらその分の対価をいただく。
その対価は需要と供給によって決まり、よいサービスを提供したらその分多くの対価を。サービスの質が低下したら少ない対価になるか、全てを逃してしまう。これが通常の商行為における基本なのですが、これが介護事業には通用しません。

正しい対価が設定されていない

例えば、訪問介護や訪問看護などのご自宅に訪問して行うサービスの移動に対する対価が設定されていません。
次の訪問先までの移動距離はときによっては30分以上かかることもあるのですが、それに対する対価(介護給付費)が設定されていないのです。
ですから、事業所よりよほど離れたお宅であると訪問を断られてしまう事例かなりあるのです。
都心部であれば他の訪問事業所を見つけることができるでしょうが、僻地にお住まいの方では訪問サービス自体を諦めざるを得ません。

また、デイサービスにおいても入浴介助に対する対価が40単位と400円ほどに設定されています。ご利用者様の介護度によりますが大変な方だと一人に対して介護職員2人で1時間がかりで入浴介助を行った場合でも、400円しか支払われません。
これでは入浴サービス提供するほど赤字になってしまうと入浴サービスを中止する事業所が出たくらいです。
このように介護サービスに対する対価設定がおかしいことで事業所の売上が不当に圧縮されており、ひいては要介護者に対して必要なサービスが提供されないという自体にまで発展してしまっているのです。

サービスの質を上げても意味がない制度

介護サービスはすべてのサービスに対して細かく対価が設定されています。これは事業者側で勝手に値上げや値下げすることはできません。
つまりサービスの質が上がっても下がっても、価格が変わることがありません。例えば、厳しい麻痺を持った利用者に対して百万円以上もする最新式のリハビリ設備を導入しても、国内でも有数の知識と経験を持った理学療法士が一対一でリハビリを行っても同様の値段しかつけられないのです。
そうなれば、事業所にはサービスの質を上げるインセンティブは存在しないことになります。
お金や時間などのリソースをかけた分だけ損になってしまうのに、質の高いサービスを提供する経営者は経営者として失格ですから。