日本は近年の少子高齢化の影響もあって、社会保障費は年々増加しておることはみなさんもご存知のことでしょう。2022年度の社会保障給付総額は130兆円を超えると予測されており、2040年には190兆円を超えるとも予測されております。これからの日本はこのとんでもない現実に目を背けることはできません。
これを国民1億人で賄うとすると、一人当たり200万円近いお金を負担しなければならないことになりますが、その負担の詳細をご存知でしょうか。
当然所得の多い人にはそれなりに負担してもらおうというのが、税や再分配の基本ではあるのですが、社会保障費(社会保険料)の負担はかなり高所得者に優遇されているというお話をしたいと思います。
まずは、社会保障給付の打ち合わけと、その財源を軽くなぞっていきます。

社会保障費の支出割合と財源

社会保障給付費とは、年金や病院などへの支払い(保険分、自己負担分)、介護、児童福祉、衛生費、コロナ対策費諸々を含めた支出額です。ここでは20220年度、130兆円の支出割合を簡単に示します。

  • 年金  55兆円
  • 医療  43兆円
  • 介護  12兆円
  • その他 20兆円

医療費が年金に迫るほど多額で驚きますが、これがどんどん伸びているのが実情です。

社会保障給付費の財源

続いてはこの支出に対する財源です。

  • 保険料(事業主負担) 32% 42兆円
  • 保険料(従業員負担) 28% 36兆円
  • 国          30% 39兆円
  • 自治体        10% 13兆円

社会保障給付はこのように保険料で60%ほど賄われていますが、到底足りないので税金が投入されています。国家予算で30兆円などと予算がつけられているのはこれのことを指しています。
なんだかんだ言っても事業主でもあり従業員でもある私から見れば、全部国民が払っているんじゃん!!
ということになりますよね。
だから、一人当たり110万円と言う表現が一番しっくり来るような気がします。
我々は汗水垂らして、4ヶ月位タダ働きさせられているわけです。笑

社会保険料の被保険者負担

さて、本題の社会保険料の被保険者の負担の公平性について論じて行きます。
給与明細を見ると社会保険料として多額のお金が天引きされていますよね。
その社会保険料には負担割合が決められており、健康保険は約5%ほど、厚生年金が約9%ほどと決められています。つまり給料の14%ほどが社会保険料として天引きされているのです。
皆さん給与明細を引っ張り出してきて計算してみてください・・・

どうですか、合わなかったんじゃないですか?
実は社会保険料は給料にそのままかけられるわけではなく、4,5,6月の給与から「標準月額報酬」を決めてそれに負担割合をかけて決められているのです。
上記期間の平均月収が25万円なら標準月額報酬は26万円、40万円なら41万円と標準月額報酬が決まります。
この標準月額報酬に負担割合をかけたものが社会保険料となるわけです。

協会けんぽ 保険料額表を参照

そしてこの標準月額報酬というのが、曲者なのです。

標準月額報酬の上限

実は標準月額報酬には上限があります。上記の協会けんぽの表を見ていただきたいのですが、健康保険は135.5万円、厚生年金は65万円と上限が決められているのです。
上限以上の月収がある人でも上限をもとに標準月額報酬が決められてしまいます。
つまり、月収が1億円あったとしても、健康保険料は標準月額報酬139万円に対する保険料の68,805円しか払わないで済むのです。これが月収にそのまま負担割合をかけた場合、495万円の負担になるはずなのです。
これは月収が10億円あるような人でも6万8千円ですみます。5千万円の保険料をとってもいいのに。
年金においても同様に言えることなのです。
ちなみに所得税は累進性をとっており、年収が高ければ高いほど税割合が増えていきます。年収200万円だと10%ですが、年収4000万以上であれば、(越えた分に)45%もの税金がかけられることが知られています。
累進性は必要なくても、上限は必要ないように思います。

月収100万円以上の人は3%程度いると言われていますから、そこそこの財源になることはまちがいありません。それ以上に高所得者との公平感を持たせるためにも標準月額報酬の上限は撤廃してもいいのではないかと思います。