介護事業の売上は公定価格

介護保険事業の売上に当たる介護給付費が国の基準によって決められている話はなんどもしました。
訪問系サービスには時間あたりの金額、通所系サービスには定員数が決められているため介護事業所の売上の限度というものが決まっていることになります。
そうなると、当然介護職員一人ひとりの売上も大体見えてきてしまうのです。
そうです、つまり、介護職員の給料も公定価格によって決められてしまっているのです。

介護職員の1時間の売上は3,000円

それでは具体的な介護サービスに対する対価を見ていきましょう。
訪問介護は身体介護と生活援助に別れていて給付費も別々に設定されています。身体介護は主にお風呂や排泄など要介護者の移動が必要となり重労働になります。生活援助は身の回りの炊事洗濯を手伝う感じです。
たとえば訪問介護の60分未満の身体介護サービスは約4,000円になります。
一方生活援助サービスの場合45分未満で1,800円程度です。これを60分辺りに直すと2,400円程度になります。
つまり、介護職員が1時間働くと重労働なら4,000円、軽労働なら2,400円の売上があげられるのです。平均すると時給は3,200円程度となります。
デイサービスの場合もそれほど開きはありません。デイサービスの介護給付費はご利用者の介護度やご利用時間によって細かく別れていますが、介護度2で入浴やリハビリを行った場合を想定します。
デイサービスは1日利用すると9,000円程度の収入があります。
デイサービスの場合は介護職員が1対1で介護を行っているわけではありません。介助内容や施設の規模にもよりますが一人の職員で3名程度を見ることができるでしょうか。
そうすると、一人の職員で1日27,000円の売上を上げることができます。職員が1日8時間働くとすると1時間あたり3,400円程の売上をあげられます。
これも、先程の訪問介護と大体同じくらいになります。

※参考
訪問看護:1時間あたり10,000円程度
訪問診療:15分辺り35,000円程度

介護職員時給1,500円限界説

この売上から給料が支払われますが、当然サービスにかかる費用や会社の利益が引かれます。
介護事業は人件費率がとても高く60%を超えると言われていますので、ここでは便宜上売上の40%が給料として渡されるとします。
そうすると介護職員の時給は1,320円程度と計算されます。これを一日8時間、月22日間働くとすると月給は23万円程度と計算することができます。
はい、これで介護職員の平均給与とだいたい同じ数字になりますよね。
ここから会社の規模や利益、地域柄や求人倍率などによって多少変化しますが、介護職員の給与はこうやってすでに決められてしまっているのです。
巷では経営者が搾取しているとか言われることもありますが、それは間違いです。これほど人件費率の高い業界はありません。どこもギリギリでやっているはずです。
公定価格の問題なのです。大きな問題だとは思いませんか?