介護事業者が利益を出せなければ職員の給料を上げることなんてできないのは当然です。
介護事業は介護給付費という公定価格によって売上単価が決められており、定員数によって顧客数に上限が設定されています。これはどんなに頑張っても超えられない壁が設定されているようなものです。
つまり、ある程度出来上がってしまった事業所では昇給の原資が見込まれないということになります。

そこで、介護給付費逓増が必要とされるのです。給料を上げる企業に減税を行う前に最も給料が低いとされる介護職員のために昇給の原資を与えなければなりません。公定価格なのですから国の責任です。国が4%の昇給を要求するなら毎年2%の介護給付費の上澄みが必要になります。
しかし、現実には公定価格はこの20年基本的に下る一方で、上がっていく気配がありません。厚生労働省はプラス改定と言うかもしれませんが、都合のいい計算に過ぎません。実質介護職員の給料が上がってきたのを見れば一目瞭然です。

処遇改善加算の功罪

2000年代の後半にはすでに介護職員の不足が叫ばれており、それに対して政府は2009年に「介護職員処遇改善交付金」を制度化しました。
2012年にこれを介護報酬の加算として組み込んだものが処遇改善加算です。
売上に対して一定割合をプラスするという支給のされ方で、業種ごとに加算率が設定されていました。
ちなみに2012年のデイサービスの処遇改善加算率は1.9%でした。
これは売上に対して1.9%分上乗せされるということです。
しかし、少なくてもデイサービスを含む小規模の事業者は処遇改善加算が生まれた2009年から2012年の間に介護報酬は大きく引き下げられました。
それは処遇改善加算の増加分を上回るほどの削減となった事業所も多数存在しました。
つまり、介護給付費を下げたお金で処遇改善加算を配ったというからくりがあったのです。
これは当時の介護事業者に対して、国は本気で介護職員の給料を上げるつもりがないんだとという強烈なメッセージとなってしまったのです。
国は経営者が介護職員の給料を上げやすいように、処遇改善加算を上げるとともに介護給付費も真の意味でプラス改定を行うべきです。