介護を取り巻く三重苦
介護業界は財政の逼迫、介護職不足、制度の劣化という三重苦に苛まれています。
これらは全て進行性の成人病のようなもので、すぐに死に至る事はありませんが放置していると様々な合併症を発症しながら徐々に身体を蝕んでいきます。
1.社会保障費の圧迫
介護は年金、医療、福祉などとともに社会保障の一部であり、税金が投入されている以上、国の財政とは切っても切り離せないかんけいにあります。
上記のように社会保障費は年々伸びており、2022年には130兆円に達することが予想されています。社会保障費は個人の保険料:約32%、事業者の保険料:約28%、税金:約40%で賄われており、基本的に年々保険料は上がっていくことになります。
その中で介護事業費は10兆円程度で、毎年2,000億円程度増えています。ちなみに年金が60兆円程度、医療費が40兆円程度になっています。
財務省は介護費用に関して非常に厳しく締め付けに入っています。そのせいで、3年毎に改定される介護保険法の改正は改悪ばかりになっており、介護業界を疲弊させて行きます。
高齢者の数が増えているのだから費用が増えて当然でしょう。それを無理に抑制させようというから制度が疲弊せていくのです。介護現場の実情に合わせた予算設定をしてもらわねば、この業界は持ちません。
2.介護職は疲弊し、介護職不足は危機的!!
私は介護に携わって12年、デイサービスの経営者として10年、たくさんの介護職員たちとともに働き、たくさんの高齢者たちに幸せを提供してきました。(つもりです。)
しかし、幸せを提供し続けてきた、私達介護職員が今、疲弊しています。
命を預かる重労働を、月収25万円以下の安月給で、サービス残業や夜勤を強いられ、人間関係に悩みながら働いています。
介護が好きなのに結婚相手の親に反対され泣く泣く別の業界へと言ってしまった若者がいました。介護が好きなのに・・・こんなのおかしくないですか?
介護職員不足が叫ばれて久しいこの国では、わずか10年後には70万人の介護職員が不足するなどというデータも示されているのに国も自治体も何もやってくれません・・・
もう一度言います。介護職の平均月収は25万円程度です。こんな業界に若者が来てくれるでしょうか。いい加減、制度が間違っていることを認め、抜本的な改革を行わないと介護業界は潰れてしまいます。
介護職不足の現状についてはこちら
結婚できない介護職の話
デイサービスで私と一緒に働いてくれていた30代の同僚が、結婚を期に介護職を辞めたいと相談してきました。介護は好きだけど、相手の親にその収入では結婚を許せないと言われたそうです。介護が若者の結婚を許さないような仕事であってよいのであろうか。介護が好きな若者を見捨てるのか。この仕組を作りあげ改悪を続ける政治家に対する怒りで煮えたぎりました。この業界はこのままではそう遠くない時期に破滅する。それを止めなければと政治の世界に足を踏み入れる決意しました。
下記は私が介護業界、ひいてはこれから介護を受けるであろうすべての国民の未来を守るための成し遂げたい理念的な政策です。
3.規制の呪縛で失われる介護業界の競争力
介護事業は未だに自由な価格設定やサービス提供時間中の保険外ビジネス(混合介護)を認めていません。サービスの加算に付いても人員の配置と記録のみで算定されています。
そのせいで介護事業者は創意工夫を行わなくなり、最低限のサービスを行い紙の記録を残すことにエネルギーを消費しています。
また、規制に縛られることで、新規参入は制限されどんな事業者でもある程度の売上がたちます。このぬるま湯が競争力のない事象者を延命させ続け、業界の成長を阻んでいます。
本来、サービスの向上や新たな設備投資によって競争力をつけることで業界全体として切磋琢磨し合あうのが健全な業界です。このままではサービス業の一種として介護事業は立ち遅れた業界になってしまうでしょう。
いつの日か、高級ホテルなどの外国資本が介護業界に殴り込みをかけてきたときに、一気に日本の介護事業者が潰されてしまうかもしれません。
規制を緩和するところは緩和して、競争の中から介護事業所がしっかりとサービス業としての付加価値をつけるための環境を整備しなければなりません。
介護崩壊はもう始まっている!
介護崩壊が起こってしまえば必要な介護が受けられず介護難民とかした高齢者障がい者が増え、その負担はご家族や地域にも及びます。しかし、介護崩壊はすぐそこに迫っているのに、行政はやってる感を出すための政策しか打ち出せずにいます。
介護崩壊が起こったら
また、今現在の介護保険はなんとか回っているように見えますが、このまま10年もすれば下記のようなそれは恐ろしい介護崩壊が起こってしまいます。
世の中の介護は家族がやるか、超高額費用を払うかの2択になってしまいます。
上記のようことはこのままではほぼ間違いなく訪れるといわれている介護の未来です。
もうすでにその兆候は始まっています。例えば要介護3から入れるはずの特養は要介護5であっても簡単に入れる状況ではありません。それは人不足でベッドを開けることのできない施設が多数存在するからです。
介護サービスを利用することができなくなった高齢者の面倒を見るのは家族となり、老々介護による事故や介護離職がますます進みます。
また、障害福祉施設はさらに悲惨で施設の維持はほぼ不可能で、保育所も閉鎖せざるを得ないところがかなり出てくることになります。
認知症に対応する施設や支援ヘルパーが減ってしまい、見た目にはわからない認知症の高齢者が増えて街が混乱するかもしれません。
介護崩壊は突然に!
私同じ40代の方々に介護崩壊の話をしても自分にはまだ関係ないといった反応が多いのですが、介護をより身近に感じるのはそう遠くない未来です。
我々40代の両親はもう70代に突入しており、今の70代がいかに元気でも10年もすれば介護が必要になることでしょう。そして30年もすれば我々が介護を受ける時代になるのです。これを他人事や対岸の火事だと考えていてはいけません。
制度を変えるには時間がかかります。ましてや社会保障を含めた超巨大な仕組みの歯車に一つである介護に変革を起こすことは並大抵の労力や時間では不可能です。
みなさん、気づいてくださいこの危機的状況に。そして、少しでも声を上げてほしいのです。
ご家族の介護負担は社会問題へと
介護崩壊が起こると困るのは高齢者や障がい者だけではありません。そのご家族に大きな介護負担がのしかかっていきます。施設に入るには多額の費用がかかるため誰もが入所できわけではありません。
素人のご家族が介護を続けることで平穏な生活は脅かされ、大きな社会問題となっていきます。
ヤングケアラー
家族の介護を行うために学校に通うことができなかったり、友達と遊ぶ時間が削られるような子供のことをいいます。ヤングケアラーは家庭内に潜み見つかりにくいことが指摘されています。
また、本人が自身の問題点に気づきにくいことも問題化しにくい理由だと言われています。
ビジネスケアラー・介護離職
仕事をしながら家族の介護を続けている方も増えています。と言うより当たり前になりつつあります。
同居していればまだいいですが、別居家族の介護を仕事をしながら行うのは大変です。
手が足りずに会社を退職したり、パートに転職しなければならない方も増えており、介護離職として大きな問題となっています。
ダブルケア
近年では晩婚化の影響もあって子育てと親の介護を同時に行っている主婦が増えています。
子育てと高齢者介護は全く別物で、同時に行うことは大きな体力的、精神的負担になります。
認知症介護
認知症患者は700万人を超えたと言われれ、予防が必要な人を含めると裕に1,000万人を超えており家族の負担や地域の負担が大きくなっています。
認知症患者の症状は多岐にわたり一概に対処できるものではありません。負担のかかるケースではご家族の生活を一変させてしまうほどの影響があります。
認知症は早めの予防、早めの診断、早めの治療が重要です。
無策な政府
介護業界は危機的状態であるにも関わらず、行政は問題を先送りにして抜本的な改革を打ち出せていません。
正直やっているポーズだけの解決策には辟易とします。例えば技能実習生を代表とする外国人の在留資格による介護職への登用制度ですが16万人の外国人を介護業界に定着させることを目標にしていますが、現状1万人程度にとどまっており、介護職不足を解決できていません。
また、介護職の賃金をあげるための処遇改善加算に関しても全産業の平均と比べて200万円低いと言われているのに月9,000円の改善しか打ち出せない政府にはがっかりです。しかも、これに関しては、生活相談員やリハビリ職に関しては対象外とされており、実質の効果は遥かに低いと思われます。※処遇改善加算の問題点についてはこちら
このように、現在の行政から介護業界をどうにかしなくてはという意思は感じられません。無策を取り繕うための統計データづくりに精を出しているように思ってしまいます。
※統計データの疑問については別の記事で
坂元ゆうきの描く解決策
介護業界の問題や暗い話ばかりでは仕方ありません。坂元が考える介護の未来と問題の解決策をご覧あれ!
訪問・通所利用軽度者の保険外問題について
財政審が毎回出してくる訪問介護や通所介護(デイサービス)を利用する要介護1・要介護2は地域支援事業(総合事業)に編入させるという案ですが、すでに要支援1・2の方で編入が行われています。
簡単に説明すると、通常保険サービスは国が決めたサービスと料金しか採用できません。それを自治体ごとにサービス内容や料金を決める権限を与えるというものです。ただ、たちが悪いのが今までの料金以上にしてはいけないという蓋が被されていることです。
つまり、自治体次第で保険同様のサービスを続けることが出来ますし、自治体次第ではまるで利用ができなくなるというものです。
総合事業サービス中の保険外サービスを認めろ!
現在保険サービス中に保険外サービスを行うことは禁止されています。当然保険サービスでやるべきことをやらずに保険外サービスを行うことは避難されるべきですが、例外の規定を作り認めるべきです。
例えば訪問介護であれば、実際家に行き保険内のサービスを行った後の時間に保険外サービスを頼んでも、ヘルパーは一度事業所に帰らないと保険外サービスを提供できません。
これを保険サービスの直後であれば保険外サービス可能とすれば事業所にとってもビジネスチャンスとなるわけです。
デイサービスでも高齢者はいらっしゃる時間の大半を休憩時間として過ごしています。その間に散髪を2,000円で提供したら喜ぶ方も多いでしょう。現在のルールではこれができないのです。
介護度1・2を総合事業に組み込んでもいいですが、ただ単に報酬削減となってしまったら介護業界は終わります。せめて現状維持の報酬を保ったうえで保険外サービスの解禁が必要です。
介護職を幸せにして高齢者も幸せに!
介護業界に人を集めなければなりません。
構造改革で利益を出せる業界に!
介護はこの先40年にわたって市場が伸び続ける稀有な存在です。なのに全然儲からない!
事業者が儲からないと才能ある経営者は参入して来ません。介護保険事業は公定価格(介護給付費)によってサービスの内容と単価を決められている事業です。その単価は低く、3年に1度しか改定が行われないこの制度では感染症対策への費用増、継続的な物価高に対応できていません。介護業界を利益の出せる業界に!
・介護給費の適正化
・保険外事業の規制緩和
・高付加価値を提供するサービス事業者への投資
坂元が理想の介護を語る
高齢者、そのご家族、介護職員、介護事業所、地域の人々、行政、介護に関係するすべての人が充実した幸せになるような仕組みは作れないか。理想を語るなと怒られるかもしれませんが、ここでは語らせてください。