防災と地域包括ケアは非常に相性の良い考え方で、同時に推進可能だと考えています。地域包括ケアの根幹となるコンセプトは「自宅を中心として30分圏内に漏れと無駄のないサービス(医療介護ボランティア等)を配置すること」です。この自宅の機能に防災を付け加え、地域に避難所や備蓄の確保を入れれば同様のコンセプトに内包可能(上図)です。私の理想とする防災を含めた地域包括ケアの話をさせていただきます。
自治体主導でデータに基づいた施設計画策定
あの地域はやたら整形外科が多いとか、2軒となりに歯医者が並んでいるなど疑問に感じた経験があるでしょうか。
現在、診療所や介護施設を開業する際、行政に必要な書類を提出したり、設備や人員基準を守る必要がありますが、逆に言うと基準を満たしていたら必ず開業が許可されることになります。ですから、地域によっては施設が偏ってしまったり、足りない施設があったりと偏在性が生まれてしまいます。自由な開業にも適度な競争が生まれるというメリットがありますが、医師の偏在性や圧倒的な介護職不足など現状のリソースを考えると過度な競争を行っている余裕はありません。
これからの医療機関や介護施設の建設計画は地域の高齢者のヘルスケアデータを分析したうえでどのような医療機関がどこに必要なのか、特養などの介護施設や訪問介護ステーションがどのくらい必要なのか、自治体が主導し細かい数値まで策定されるべきです。自治体として医療機関やある規模以上の介護施設に関しては総量規制をかけると同時に、足りていない医療機関や介護施設に関しては情報を発信ししたり報酬を上げることで必要な機能を誘致するべきだと考えます。
当然的確な計画を策定するためにはどれだけデータを集め、正確な分析を行うかが重要になります。
しかし、これを早く実現しないと今も医療介護に使えるリソースが減り続けています。
災害と介護に強い自宅作りを支援
災害時の避難所を想像すると、人が殺到しトイレを流す水もなく寒くプライバシーのない体育館を思い浮かべる方が多いでしょう。できれば行きたくないところですよね。そのためにも自宅の機能を強化し、災害が起きても生活できるよう準備することはとても大事なことです。
災害時に自宅にいられなくなる理由は、大きく下記3点です。①家自体が(半)倒壊してしまっている。②水電気ガス等が使えなくなる。③食料品の備蓄が少ない。
これらに強い家であればかなりの時間を自宅で待機することが可能になり、避難所を圧迫しません。
また、介護に強い自宅も大事な家の強化要素です。家を立てるような年代の方はまさか自分に介護が必要になるなど想像に出来ないため家造りに介護の考えは入ってきません。しかし、介護を考えられた家と考えられていない家では老後の生活はガラッと変わります。バリアフリーで手すりのつけやすい廊下、玄関から近い居間、トイレや浴室の動線等様々な工夫の方法があります。
そういった工夫で怪我のしにくい、介護度がついても生活することは可能になります。
災害時の介護施設活用の拡大
災害時に介護事業所や施設が活躍できる場はもっとあると考えています。介護施設自体は耐震性を施設基準でチェックされていたり、災害に強い設計になっているためよほどの災害でない限り、機能を残しています。また、特に訪問系の介護事業所にはたくさんの家庭支援に慣れた従業員が在籍します。区内で支援を必要としている被災者をいち早く助けることが可能になるはずです。また、災害時重要となる要配慮者の安否確認のため、ケアマネジャーが保持している要介護者のリストは必ず役に立つはずです。
しかし、実際のところ介護事業者が要介護者を支援する場合ケアプランが必要であったり、災害によって介護が必要になった方の場合、介護認定の申請(通常1ヶ月程度かかる)が必要だったりとスピード感がありません。ですから、介護施設はリソースがあってもこれまで、災害時に大きな活躍が出来ていなかったと考えています。
介護事業者への災害時特別報酬制度の導入
私は災害時に、要介護認定やケアプランの策定などを一時的に免除し、介護事業所と被災者の契約のみで介護サービスを提供可能にすることで多くの人を救うことが可能になります。
特に訪問系サービスがご自宅に伺ったり、通所系のサービスであれば、施設に通所させることで食事の提供や入浴サービスの提供を行うことも可能です。
また、災害時にケアマネジャーが行う要介護者や要支援者への安否確認や自宅の状況確認に報酬をつけることで活躍の場が広がるはずです。
目黒区介護福祉職囲い込み政策
介護職員不足が深刻化しています。2040年には57万人の介護職が足りないと試算されましたが、あれから抜本的な改善策は講じられず、頼みは技能実習生(外国人労働者)の呼び込みだけというような状況です。特に都心部における介護職不足は顕著で、目黒区でもすでに要望通りの時間に訪問介護を受けることができなかったり、ショートステイは2ヶ月前に予約しないと利用できないなど、介護崩壊が始まりつつあります。そのため各自治体は独自に介護職員を集めるための政策を取りつつあり介護職員の囲い込みが始まっています。目黒区も介護崩壊を防ぐためにも介護福祉職を呼び込むための独自策を講じなければ、数年後にも介護崩壊が起こってしまうかもしれません。
介護福祉職員を囲い込むための政策
- 目黒区に暮らし目黒区で働く介護職員に家賃補助や引越し費用補助
- 目黒区内の施設転職の斡旋(職場体験や転職相談、転職祝い金制度等)
- 施設の働き方改革(時短正社員や短時間有給制、育休推進など)への補助