私が介護に携わるようになって12年、様々な高齢者と出会い交流を持ってきました。延べ3,000名くらいでしょうか、そのほとんどの方にしている質問があります。

「それは、これから1週間以内に使わないといけない100万円をもらったらどうしますか?」

というものです。
その答えの50%くらいは使い道がない、誰かにあげるというものです。
残りの50%も
・子供や孫(介護職員など)にあげる
・旅行に行く
・あんたにあげるよ
などといいうものです。
つまり、高齢者は日頃からなにかにお金を使ってやりたいことがない、もしくはお金を使うことを意識していないのです。

高齢者はお金を持っている

一方高齢者がお金を持っていないかというとそうではありません。
65歳以上の高齢者の総保有資産は2020年で1,500兆円を超えており、国内の個人資産は3,000兆円と言われていますからその半分を65歳以上の高齢者が保有していることになります。
そしてそのうちの1,000兆円が現金や株などの金融資産と言われています。
つまり、いつでも使えるお金というわけです。
国内の個人消費が毎年300兆円程度と考えると、この1,000兆円を少しずつでも使ってもらえれば大きな経済効果があるのは間違いありません。
当然それは政府も考えることで、歴代の政府がずっと叶えることができなかったことになります。

要介護者のお金の使い道

なかなかお金を使わせることのできないお金を持っている高齢者。そして高齢者の中でもお金の使い道がない要介護者。
私は、我々介護事業者こそ要介護者のお金の使い道を作っていくべきだと思っています。要介護者が何を望んでいるのか、どんな障害があってそれが叶えられないのか、我々は要介護者と普段から時間をともにしているからこそわかることがあるのです。
以下に私が考える要介護者のお金の使い道を何個かあげてみます。他にもお金の使い道は必ずあるはずです。なにか思いついた方はコメントでもメールでもぜひ提案してください!

見て触って、買うもの

多くの要介護者は買い物に行きたいと考えています。ヘルパーに行ってもらえばいいと思われるかもしれませんが、やはり店舗に行って見て触ってみると購買意欲もまるで違ってきます。
購買意欲をあげるためにも店舗に行くことが大事になります。自分の足でスーパーへ日用品を買いに行くためのヘルパーサービスはどんどん活用していくべきです。
要介護者であっても職位対する意欲が高い方は多く、いいものを見て買いたいという希望も多いです。
日用品以外であっても買い物への同行は介護保険制度で付き添いを行えるようにする必要があるかもしれません。介護保険制度を使えなくても介護事業者は買い物同行への自費サービスを強化してもらいたいです。
私の経験上、要介護者であってもテレビやラジオにはこだわりがあるように思います。家電量販店で最新のテレビや冷蔵庫などを見れば購買意欲が湧くかもしれません。

旅行や観光への弊害

旅行や観光に行きたいと思っている要介護者は非常に多いです。昔行った温泉地にまた行ってみたい。旦那と思い出の地にもう一度行きたい。などという希望です。
旅行の希望を阻んでいるのは、ホテルや旅館の体制と移動の問題です。
体制の問題とは、車いすの方の対応ができるバリアフリーの設備や要介護者の世話ができる人材がいるのか、要介護者特有の入浴や食事の問題を解決できるのかなどです。
移動の問題は車いすの送迎が可能な車があるのか。や、電車やバスに乗れる方であってもトイレの問題もあります。
要介護者は周りに迷惑をかけることを申し訳なく思っています。そんな思いをしてまで旅行に行きたくはないと考えてしまうのです。
しかし、逆に考えればこれらの問題を解決すれば要介護者にも旅行や観光を楽しんでもらえるはずです。

ネット環境の先に

高齢者こそネット環境を整えるべきだと思っています。見守りやバイタルチェックのデバイスなどはこの先どんどん進化するものだと思います。しかし、ご自宅にネット環境が揃っていなければ便利な機器を利用することができません。
ネット環境が揃えば通販やサブスクサービスなども利用出来るようになります。

介護職員へのチップ?制度は可能なのか

ここで私が考えている、高齢者のお金の使い先を一つ紹介したいと思います。
それが、介護職員へのチップ制度です。
お世話になった介護職員に対して多少のお小遣いを寄付できる制度を実現させたいのです。
現在の介護保険制度ではグレーになっており、自治体によっては規制しているところまであります。
介護業界全体的に「それはやっちゃいけないよな」的な雰囲気が漂っています。
お金を持っており、使えない高齢者がいる一方、低賃金で結婚すら諦めていしまう介護職がいるのに、わざわざ規制する必要があるでしょうか。
私はチップ程度の金額にするなど、ガイドライン的なものを作ってこの介護職へのチップ制度を実現させたいと思っています。詳しくは別の記事で。