介護業界にいらっしゃる方であれば、実感しているであろうと思いますが、今介護現場で働く外国人は非常に増えています。一昔前はフィリピンの方、最近ではベトナムの方やネパールの方が増えているでしょうか。
介護職不足が危機的な状況である中でその解決策として大きな期待を持たれている外国人の登用ですが、それはそれで問題や課題も抱えていますので、日本の介護業界で働く外国人の現状について記述していきたいと思います。
日本で外国人が働くためには在留資格が必要となるのですが、介護業界で働くために下記のような制度が適用されます。

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  • 特定活動(EPA)
  • 技能実習
  • 在留資格(介護)
  • 特定技能1号

特定活動(EPA)

EPAとは、日本と相手国(現在フィリピン・ベトナム・インドネシアのみ)の間で経済活動の連携と強化を図るために設けられた制度のこと。下記のような条件が付けられています。
母国で介護や看護の知識・経験のある人が対象で日本入国後、4年以内にに介護福祉士に合格すれば在留期間を更新して永続的に働けます。

在留資格(介護)

17年9月よりはじまり、介護福祉士養成施設を卒業し介護福祉士の資格を取得した留学生がその後日本で介護職として働くことを想定して創設された制度です。「介護」の場合は専門人材となり、本人が希望する限り在留期間を繰り返し更新することが可能です。2019年時点で958名の介護福祉士合格者がいます。

在留資格(特定技能)

「特定技能1号」とは、就労を目的として外国人を受け入れる制度のこと。
技能・日本語の両方の試験に合格した場合、最大で5年間介護施設で働くことができます。19年4月よりはじまりましたが、 21年 3 月時点の受け入れ人数は 1,705 人まで増加したが、想定より低い水準に留まっています。

技能実習

17年11月よりはじまり、開発途上国等から外国人を期間限定で受け入れ、日本での実習(講習及び就労)を通じて技能移転を行う国際貢献のための在留資格です。
ただし、最大でも5年しか在留できず、入国1年後には日本語能力検定N3の取得が義務付けられています。
訪問系のサービスに従事することはできません。
19 年 3 月時点では 1,823 件、20 年 3 月時点では 8,967 件と飛躍的に増加しています。

外国人採用のメリット・デメリット

外国人の採用にはメリットもデメリットもあります。しかし、日本人を含めて介護職不足が著しい現代の介護業界で外国人の受け入れを無視するわけには行けません。

外国人採用のメリット

外国人を採用すれば人手不足だけではなくほかにも様々なメリットが見込めます。私もデイサービスで計5名ほどの外国の方を採用してきましたが、総じてまじめな方が多く、明るく元気な方が多かったです。また、一人の方を採用し、施設を気に入ってもらえると友人を紹介してくれたので助かりました。
一般的にも、外国の方は昭和の良き日本の雰囲気を持った若者が多く、高齢者に受けがとても良いです。また、母国の話を聞いていると高齢者たちも旅行気分に浸ることができるようで話が盛り上がります。
他にも日本人の若者に刺激を与え、良い意味での競争意識が芽生えるかもしれません。

外国人採用のデメリット

外国人を採用した場合やはり問題になってくるのが言語の問題です。在留資格を取れているのですからある程度の日本語の理解はあるのでしょうが、微妙なニュアンスや高齢者特有の言い回しなどについてくるのは難しいかもしれません。また、「熱い!」とか「痛い!」など突然の叫びにとっさに反応するのも母国語でなければ難しいというようなこともあるかもしれません。
また、記録に関しては外国人だからといって行政は容赦してくれません。難しい感じをかけとは言いませんが、日本語でわかる記録を書かねばなりません。
これは結構難しいことで、記録を求められない職場を探している外国の方に何度もお会いしました。

施設側の受け入れ準備

外国の方が日本で働きたいとわざわざ来てくれているのですから我々も万全の体制で受け入れなければなりません。それが礼儀ですし、彼ら彼女らはたとえ母国に帰っても母国で日本での体験を話し、さらに若者を日本に引き寄せてくれるかもしれません。
例えば施設にある資料にフリガナを振ってあげたり、ICTデバイスの導入で音声入力や記録の簡略化ができるのであれば積極的に採用してあげるべきです。
また、給料水準も日本人と同等のものを用意して置かないといけません。外国人だからと不当に安い給料で働かせられるなどと考えている方が未だにいるかも知れませんが、それも今は昔の時代です。
彼らはしっかりとネットを使って給料水準を調べています。それに現代の日本の水準ですら諸外国と変わらないレベルまで落ちているのですから、採用すらできないでしょう。
また、技能実習生の労働環境が悪く、脱走する実習生が増えているなどと報道がなされると、イメージが悪くなりさらに日本への足が遠のくことになります。勘弁してほしいものです。

日本に外国人を呼び込むには

上記のような在留資格制度が整いましたが、まるで計画通り外国人を日本に呼び込めていません。
2040年に70万人の介護職が不足するといわれているうち、20万人を外国人で賄おうという皮算用を行っている政府の方針ががまるで機能していないは明白です。
外国人が日本に来ない理由は様々ありますが、最も大きいのは在留資格取得のハードルが高いことです。基本的に全ての在留資格者が永住するためには介護福祉士の取得を求められますが、これは日本語で試験を受けなけらばならず、内容は理解していても日本語の把握に時間がかかり、問題を解くことが難しいのです。
ここまで介護職不足が進んだ今、ここまでの条件を求めることが適切なのでしょうか。せめてひらがなの試験問題を用意するなどできないものでしょうか。漢字が苦手だったとしてもデバイスが発達した今施設側の工夫で対応可能です。また、留学生の受け入れも学費の補助を含めて一段と推進してもらいたいです。
国として日本の介護の良さをアピールするための取り組みも必要かもしれません。
このように今一度外国人介護職を日本に呼び込む政策について考え直す時期が来ているのではないでしょうか。
すくなくても外国の方に頼らねば日本の介護業界が生きてはいけないのは明白です。